糖尿病の患者さんからよくいただく質問が「糖尿病は治りますか?」というものです。自分が糖尿病になるなんて……とショックを受ける気持ちはよくわかりますし、治せるのであればどうにかして治したいですよね。

結論からお伝えすると、残念ながら糖尿病が治ることはありません。糖尿病は「血糖値が高くなりやすい体質」のようなものなので、風邪のように完治させることはできないんです。

「治らないなら治療する意味もないのでは」と思ってしまうかもしれません。が、糖尿病の治療をする目的は「血糖値が高い状態が続くことによる合併症を予防し、健康な人と変わらない生活を送れるようにすること」です。風邪やインフルエンザのように、治すことが治療の目的ではないのです。

血糖値を上手にコントロールできれば、合併症のリスクを最小限に抑えて、健康な人と同じように生活できます。糖尿病にかかったからといって、今までできていた何かを諦めたり、将来的な病気のリスクを過度に恐れたりする必要もありません。糖尿病とうまく付き合っていくという考え方が、血糖値をコントロールするうえで大切になってきます。

治療を続けて血糖値がコントロールできるようになってくると「もう治療をやめてもいいのでは?」と思う瞬間が必ず訪れます。でも、治療をやめたいと思ったときに、決して自己判断でやめないでほしいんです。必ず医師と相談しながら治療を進めてください。最終的には、食事や運動などの生活習慣を心がけるだけで、病気をコントロールできる状態だって目指すことは可能です。どうすれば薬をやめられるのかをしっかりと話し合いながら、順を追って一歩一歩進めていくことが大切です。

自己判断で薬をやめてしまうと、せっかくコントロールできていた血糖値が元に戻ってしまい、薬をやめるまでの道のりが遠のいてしまいます。「急がば回れ」ということわざ通り、医師と二人三脚で進んでいくのが治療の近道です。ぜひ、主治医の先生と相談しながら治療を進めてくださいね。