「運動が体に良いのはわかっているけれど、忙しくて時間がとれないからできないんです」ーー糖尿病の患者さんからよく相談されることのひとつです。まとまった時間をとって運動しなければ効果がないと思うと、ハードルが高く感じてしまいますよね。
実は、運動は短時間でもこまめに体を動かすことで、血糖値を下げる効果があります。食後に10分ほど歩くだけでも、血糖値の上昇をゆるやかにしてくれます。買い物や掃除といった日常の家事、通勤のときに一駅分歩くといった動作も立派な運動です。長時間の運動が難しい人でも安心してください。「少しずつでも体を動かす」ことが大切です。
さらに、運動には「すぐに出る効果」と「続けることで出る効果」の2つがあります。すぐに出る効果とは、運動をした直後に筋肉がブドウ糖を取り込むことで血糖値が下がること。つまり、食後の軽い散歩だけでも即効性があります。一方で、数か月単位で継続することで筋肉の量が増え、糖をため込む力が高まり、血糖値が安定しやすくなるという長期的な効果もあります。筋肉の量が増えると基礎代謝も上がるので、日常生活を送るだけでもエネルギーを消費しやすい体に変わっていくのもメリットです。
筋肉量を維持するには、運動の間隔を空けすぎないことが大切です。週3日以上は運動することを心がけましょう。運動を毎日するのが難しくても「2日以上空けない」ことを意識するのがポイントです。
糖尿病の治療において運動は特別なものではなく、生活の一部として取り入れられる習慣です。きっちり1時間走る必要はありません。10分の散歩でも、掃除や買い物でも十分に効果があります。大切なのは、自分が無理なく続けられる運動を見つけること。そして「できる範囲で少しずつ」を積み重ねていくことです。
糖尿病以外にも持病がある方は、運動の負荷が強すぎると逆に悪影響を及ぼしてしまうことも。自分にとって適切な運動量や負荷を、主治医と相談しながら続けていきましょう。少しずつでも続けることが、薬に頼りすぎずに血糖値を安定させる大切な一歩になります。