糖尿病と診断されると、「もう甘いものは一切食べられないのかな?」と心配になりませんか?「糖尿病=甘いもの禁止」というイメージが根強いのは、日々の診察で糖尿病の患者さんと接していて感じます。でも、甘いものを完全に我慢しなければならないと思うと、毎日の楽しみがなくなってしまいますよね。

実際には、甘いものをすべて禁止にする必要はありません。大切なのは、量や食べ方を工夫して、血糖値を急激に上げないようにすることです。たとえば、食事の最初に野菜やたんぱく質をとってからデザートを食べる、少量を分けて楽しむといった方法でも、血糖値の上昇をゆるやかにできます。

甘いものを楽しむ際に注意してほしいのが果物です。ビタミンや食物繊維が豊富で、健康に良い食べ物と考えている方も多いのではないでしょうか。しかし、糖尿病の観点からは、果物の糖分にも気をつける必要があります。

果物に含まれる果糖は血糖値を上げやすいため、体に良いからと油断して食べ過ぎてしまうと、かえって血糖値を悪化させる原因になりかねません。果物を楽しむ場合も「量を決める」「夜ではなく朝のデザートとして食べる」といった工夫が大切です。

誰にでも、甘いものをどうしても食べたくなるときはあるでしょう。そんなときに我慢しすぎて強いストレスを抱えてしまうと、逆に食べすぎてしまう原因にもなります。甘いものを食べるときは、イライラした勢いでむさぼるように食べたり、テレビを見ながらなんとなく食べたりするのではなく、おやつの時間をきちんと作って、味わって食べることも大切です。甘いものを食べる時間を1日の中で幸せで大事な時間と認識することで、やけ食いやながら食べなど、片手間に甘いものを食べてしまう機会を減らすことにつながります。

糖尿病の治療は、生活の楽しみをすべて奪うものではありません。甘いものとのつきあい方も、主治医と相談しながら工夫していけば、安心して日常を楽しめます。自己判断で甘いものを一切禁止するのではなく、無理せずに続けられる習慣を一緒に探していきましょう。